足場の過去と現在

足場とは

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足場とは工事現場などで作業をするときに建物を囲むように作る仮設の作業床や通路を指します。足場の組立ては鳶職の主要な作業内容の一つで、かつては丸太足場が多く用いられていましたが、現代では鉄パイプを用いた足場が用いられています。
日常的によく見かける足場ですが、改めてどのようなものかと言われるとよく分からない所が多いので、この記事では足場の歴史や世界各国の足場などを探り現在の足場の状況を見てみたいと思います。

足場の歴史

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古代エジプトと古代中国

足場の歴史は古く、建築の歴史とともに存在していたと考えられます。その起源は定かではありませんが、古いものでは古代エジプトのピラミッドで足場が使用されたと言われています。紀元前2500年頃のピラミッドの建築で足場が使われていたとなると、足場は約4500年の歴史を持つことになります。
また有名な建築物で言うと、万里の長城でも足場が使われていたと言われています。

日本古代

日本の古代の場合だと700年代の奈良時代の建築物の跡から足場の柱を建てていた足場穴が見つかっています。その痕跡を調べると、足場の建て方にいくつかのパターンがあったことが分かっています。平安時代では麻柱(あなない)という言葉が足場の意味で使われており竹取物語の中にもその言葉が出てきます。

江戸時代

江戸時代になると浮世絵に建築現場の光景が描かれるようになり、葛飾北斎の富嶽三十六景では丸太足場の上の左官職人の姿が描かれています。

明治から戦後

日本では足場の材料には木材が使われ続けてきたものと考えられています。江戸時代の浮世絵の中の足場は現在の丸太足場と同じもので、その組み方がどこまでさかのぼるかが分かりませんが、おそらく最初期から現在の姿になっていたものと考えられます。伊勢神宮で20年に一度行われる神宮式年遷宮では、古代に則って丸太足場が組まれます。
この状況は明治になってからも変わらなかったのですが、1900年初め頃に海外では次第に木材に変わって鉄製の足場が普及していきました。1931年に明治屋本店の建築現場で鋼管の足場が使用されたのが日本での鉄製足場の嚆矢と思われますが、鋼管が滑るなどの理由から使われなくなり、1935年から行われた姫路城の大修理では大規模な丸太足場が組まれました。
戦後、昭和28年頃になると、森林保護の観点から丸太足場に替えて鋼管製の足場が検討されるようになりました。そして昭和29年に日本で初めて東京産業会館の施工現場で単管足場が使用されました。 その後国産の鋼製足場が生産され始め、丸太足場から鋼製足場へと次第に移行していきました。

現代

単管足場の単管とはパイプのことで、単管足場とはパイプを立てた柱と両側に抱き合わせたパイプとで作る足場のことです。材料が異なるだけで、抱き合わせて作るところは丸太足場と同じです。
しかし、単管足場は床板がなくパイプの上に直接のって作業をすることになります。そのため安全面に欠けることから、1972年の労働安全法の施行で安全基準が満たせなくなっていきました。1980年代に入ると作業用の床があるくさび式足場(ピケ足場)が開発され次第に普及していくようになりました。

20世紀の初めアメリカではデビット ・イー・ビティ氏が考案した鋼製足場が広く普及していました。これを彼の名前を取ってビティ足場と言います。これは鳥居形の建枠を積み重ねてつくる足場です。強い強度が評価され、アメリカだけではなくヨーロッパにも技術輸出されました。この足場が1952年に日本にも輸入され、日本人の体格に合った国産の足場が開発されました。このビティ足場は枠組み足場とも言われ、中高層の建築工事に広く用いられます。

世界の足場

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中国や東南アジア

中国や東南アジア諸国などの建設現場では、竹と合成樹脂の結束バンドによる「竹棚」と呼ばれる単管足場が組まれることが多くあります。日本でもつい最近まで丸太による足場が組まれていましたが、主に低層建築のための足場で、丸太足場の後継者であるくさび式足場でも低層建築が主な対象です。しかし中国や東南アジアの竹棚は高層建築にも用いられます。
香港は高層建築が多いことでも知られますが、ここでも竹棚は広く用いられており、スパイダーと呼ばれる足場職人が数十階建の高層建築の現場の足場を組み立てています。

アメリカ

アメリカは前述のビティ足場が開発された国でもあり、高層建築も多く、枠組足場が多く用いられていますが、日本の一戸建て住宅に相当するような低層住宅の塗装などに用いられる足場は日本と比べると華奢で、はしごをたてかけて施工するだけといったこともあるようです。

現代の足場市場と製品

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施工面からみる足場は、現場及び職人の使い勝手に合わせて必要なタイプの足場が選択され、さまざまなタイプがありますが、ビジネスという観点から見ると足場市場は大きく二つに分けられます。

一つは中高層建築向けの枠組み足場です。これは大掛かりで再利用が前提となっていることから専門のレンタル業者からレンタルして使用することが一般的です。大型の建築になると大量の足場を使用するためレンタルの規模も大きくなることから、建設足場レンタル市場はグローバルな市場となります。経済が急成長し都市人口も急増している新興国では建築の需要が旺盛で、従って足場レンタルの市場も大きくなりますが、このような国では足場の供給体制が不十分であることも多く、また建築プロジェクトは外国の資本や技術が導入されていることも多く、 足場のタイプやディストリビューションの選択がどのように行われるかは複雑なものとなります。

もう一つは低層建築向けのくさび式足場市場です。建築やリフォームまた塗装施工に用いられ、施工業者は地元密着型の業者であることが多く、その需要の波は経済の動向や、毎年のサイクルによっています。施工現場の種類は現場ごとに色々であり、大規模工事とは言えず、 施工業者の規模も比較的小規模になることから、大量の資材を集めたり、そのファイナンスに配慮するというよりも、現場と職人の実際のニーズにあった足場を小回りよく供給することが非常に求められていると言って良いでしょう。

日本で初めてくさび式足場が導入されたのは1979年のことでした。当時の株式会社大三機工商会(現:株式会社ダイサン)が部材全てをユニット化し足場職人がハンマー一本で組み立てることのできる画期的な足場資材として開発製造したのが始まりです。
現在くさび式足場は4規格へと進化しその中でもシンワ株式会社のキャッチャー A タイプと呼ばれる商品規格が日本のシェア70%を占めています。

くさび式足場ビジネス

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くさび式足場を用いたビジネスとしては2種類が考えられます。

一つ目は建築会社や塗装会社が自社工事用の足場としてくさび式足場を導入する場合です。
建築や塗装工事や設備工事での足場設置は必須であり、その部分を外注するとどうしてもコストが高くなります。これらの工事は常に強い価格競争のプレッシャーの下にあり、 少しでも提示価格を低くしたいが利益は確保したいと言った時に、外注部分の内製化をはかります。
この場合の問題点は人材の確保となります。日本国内での足場の組立解体作業には特別教育を受けた者しか従事することができず、さらに吊り足場などの組立解体作業には、技能講習を修了した足場の組立て等作業主任者を選任しなくてはいけません。

二つ目は足場の施工・リース企業です。
様々な現場の様々なニーズを満たすためには様々な種類の在庫を持たなければいけませんが、この仕事の利益率は在庫の回転数が大切ですので、滅多に使われない高価な部材を眠らせておくとその分利益を圧迫することになります。このバランスの取り方が難しいところとなります。